STANDARD FTM-10S 本体防水タイプ
モータースポーツ専用144/430MHz帯 FM デュアルバンドトランシーバー

  1. はじめに
    アマチュア無線の専門雑誌 CQ ham radio 4月号を広げた途端目に飛び込んできたのは水に濡れた無線機のフロントパネルの写真でした。スタンダード社が新しい無線機を発表したのだと思い、詳細を読むと「オートバイ(アウトドアモータースポーツ)向けに開発した無線機」でした。本体セパレート形の無線機で防水仕様はアマチュア無線業界でも私の知る限りでは初めてではないでしょうか。リッターバイクを所有している私としてはとても興味がありました。
    オートバイに電装品を取り付けるとき常に付きまとうことは防水対策です。モービル機と呼ばれる無線機は、四輪車両の車内に取り付けることを想定し設計がされていますので防水対策は全くされていません。一般的に無線機をオートバイに取り付ける場合、使い勝手の良さを選ぶことでは非防水型のモービル機の本体を雨がかからないシートの下に設置しフロントパネルはユーザーがそれぞれに思考をこらし独自に防水加工をする方法を取ります。使い勝手を犠牲にするが防水のことで頭を悩ませずに運用をするのには、防水型ハンディー機をハンドルバーに取り付けて利用されています。
    私の場合、モービル機を取り付けていますが、フロントパネルの防水対策は全く行っていない状態で使っています。防水のことを何とかしなければならないなと思っていた矢先に発売されたこのオートバイ専用機。衝動的に注文しやっと手元に届き取り付けましたのでご紹介します。

  2. 無線機の利用目的
    無線の利用目的はそれぞれあると思いますが、私の場合ツーリング時の仲間との連絡を中心に利用しています。グループツーリングで出かける時は比較的にライダー数が多く、先頭ライダーが安全な走行を行うための情報を他のライダーに無線で伝えたりします。例えば、路面状態や交通車両の情報など、グループが信号で分離したり、ライダー間に車が入ったりした場合など最後尾のライダーが先頭ライダーに状況を伝えたりすることで常に安全なツーリングが出来るようにしています。更に、秘湯スポットの紹介など地元の観光案内やバイクショップ、美味しい店などの情報の共有もツーリング中に行っています。
    単独ツーリングの場合、不特定多数のアマチュア局と話をすることで見知らぬ土地で友達を作りエリア情報の入手の気っかけを作っています。

  3. 無線機の概要
    一般的な無線機機能の紹介はここでは省きますが、二輪車向けの機能をカタログ上から抜粋いたします。
    オーシャンブルーのネガタイプ高輝度LEDを採用した見やすい表示とキー照明
     フロントパネルと本体がIP57規格(水深1mに30分間没しても正常な動作が可能な防水構造)に適合した防水・防塵仕様
     フロントパネルにマイク、PTT、小型スピーカーを内蔵。外部マイクなしで利用が可能。
     オプションのBluetooth®機能によるワイヤレスヘッドセット対応
     PA(拡声器)機能付き大出力8Wのオーディオアンプを搭載。
     アマチュアバンドを待ち受け受信時にAM放送/FMステレオ放送の受信やiPodなどによる外部オーディオ機器からの音楽の再生が可能。
     バイクの小さいバッテリーの利用を意識して、ミニパワー(10W/7W)タイプ。
     同乗者との通話ができるインターコム機能

    今回、私が特にこの無線機に魅力を感じた部分は
     防水・防塵仕様
     外部オーディオ機器の入力
     Bluetooth® 機能によるワイヤレスヘッドセット対応
     インターコム機能
     高速道路の交通情報(AM1620KHz)の受信として、AM放送の受信
     AF DUAL機能(待ち受け受信機能)
    です。

  4. FTM-10S導入前と導入後の構成
    私のバイクには音源としてMDプレイヤーが内蔵されているバイクナビ(Garmin NUVI360)、ETC、レーダー感知機、AM・FMラジオを自作のオーディオミキサーに入力しミキシングしています。これらの音源とICOM IC-208 無線機、2セット分のKTEL製ヘッドセットをインターコム(KTEL DF808型タンデムアンプKT021)に接続して使っていました。図参照
    発売されたFTM-10Sの大きな魅力として無線機本体にインターコム機能が内蔵され、さらにステレオ対応の外部オーディオ機器の接続を可能としています。そこで、AM・FMラジオ(無線機の受信機能を使うため)を除く今までの音源はそのまま自作のオーディオミキサーに入力し無線機のSP/LINE-IN(青色)に接続します。
    FTM-10SはオプションでBluetoothユニットが用意され、無線機とヘッドセット間でワイヤレス接続を実現することが可能となります。既存のヘッドセットにBluetooth対応の受送信機(他メーカー販売)を取り付けることで既に持っているヘッドセットの有効活用をしたり、新規にBluetooth対応のヘッドセットを購入することで、簡単にワイヤレス化が可能となりそうです。今回の導入時には、Bluetooth対応のヘッドセットの入手が間に合わず、既に所有しているKTEL製のヘッドセットを有線で接続します。
    運転手のヘッドセットは無線機のフロントパネルにオプションのマイクロホンジャック(スタンダード社 MEK-M10)を取り付けKTEL製KT044-M10ケーブル(1m長)を使い接続します。搭乗者はKTEL製KT032-M10ケーブル(1m長+1m長の延長ケーブルが含まれる)を使い無線機本体のマイクロホンジャックに接続します。KT032-M10ケーブルからPTT端子が出ていますので、ハンドルバーに取り付けた一般無線機用スタンバイスイッチ(KT030)を接続します。写真参照
    これで、タンデムで会話を楽しみながら音楽やラジオを聴き、ツーリング中の仲間より無線連絡が入ると自動的に音楽がミュートされる理想な環境に整いました。図参照

  5. 使用感とメーカーに対する要望
    取り付けが終わり早速電源を入れると鮮やかなオーシャンブルーのパネル表示が夜のコックピットを照らします。電源を入れた瞬間バッテリーの電圧表示がされます(嬉しい機能ですね)。フロントパネルの大きさやディスプレーのサイズ、ボタンキーの数や大きさなど、大変バランスが取れていると感じました。さらにキー照明も程よい明るさですので夜間走行時にディスプレーの明るさが走行の妨げにならず疲労の軽減にもつながるように感じます。
    マニュアルも読まずに直感的に操作しAM放送/FMステレオ放送の受信を車庫内で行いました。純正のAM/FMラジオは受信感度が大変悪く不満だったのですが、通信機メーカーが設計した機械だけに受信感度音質共に大変満足しました。よく受信をする航空無線の気象情報やTV放送の音声も十分な受信感度でした。
    次にヘッドセットを取り付け外部オーディオ機器の信号を聞いています。入力の切り替えは無線機のフロントパネルからの操作で行い、フロントパネルのボリュームで音量調節もできステレオ対応が嬉しいところです。音量自動調節機能(F1 AF AUTO)の設定を行うことで、周囲の音の大きさにより自動的にスピーカー(またはヘッドセット)の音量の調節ができます。以前にあったオルタネーターノイズ(エンジン回転数と共に鳴るウィーンという音)も全くありません(ヘッドセットを利用されている場合、フロントパネルのスピーカーを切っておくことを忘れずに。ヘッドセットを使っていたのでフロントパネルのスピーカーから音が出ていたことに長い間気づかなかった)。インターコム機能はフロントパネル操作でオン・オフや音量の調節が出来ます。音量・音質共に高速走行に十分耐えるシステムです。
    メモリはチャンネルごとグループ化ができ、500チャンネル分メモリが搭載されています。チャンネル毎、8桁のアルファベットで名前の登録ができるので、お気に入りの放送局の登録や仲間うちの周波数登録に大変便利です。また、ツーリング時に常にモニターをしている周波数を「クラブチャンネル」としてメモリ登録をしておくことで、AF DUAL機能(F2 AF DUAL)を動作させることで、AM/FMラジオや外部オーディオの信号の音を常に聞きながら、クラブチャンネルに信号が入るとAM/FMラジオや外部オーディオの信号がミュートされ、クラブチャンネルの信号だけが聞こえます(クラブチャンネル以外のメモリーチャンネル、指定したアマチュアバンドの周波数でも同じ動作が可能です)。これはとても便利な機能です。
    取り付けてから2日間しか経っていませんので、スキャン機能やメモリーチャンネルの登録・編集など突っ込んだ機能を使いこなしていませんが、オートバイ上で使うのには十分過ぎる機能がこの無線機には搭載されています。バッテリーの電圧表示や温度計の内蔵、音量自動調節機能やインターコム機能などオートバイ乗りのことを考えらた設計となっています。オートバイに取り付ける無線機としては間違えなくお薦めできる製品だと思います。

    最後にメーカーに対する要望として
    1) バイクから離れる時フロントパネルを外して持ち歩くことを想定し、フロントパネルとケーブルの離脱ができるようにしてもらいたい。
    2) フロントパネルと本体間を接続するケーブルが短いので長くするか、オプションで長いケーブルを用意してもらいたい。
    3) 走行中の操作を想定すると、左手(クラッチ)で操作が簡単にできるようなフロントパネルの設計(ダイアルつまみを左側に)。
    4) インターコム機能はデフォルト設定で常に作動するようにしてもらいたい。
    5) アウトプット音源の優先順位が選択できるようにしてもらいたい。(割込みが低い:ラジオ・外部オーディオ、クラブチャンネル、インターコム:割込みが高い)
    6) 音源の音量レベルの設定が各々出来るようにしてもらいたい。

    最後ですが週末私に時間を与えてくれた良き理解者である妻と手伝ってくれた子供たちに心から感謝申します。